痔核(いぼ痔)とはどのような病気でしょうか?
肛門の少し奥には肛門を自然に閉じるための血管に富んだ柔らかい部分があります。肛門への負担が大きくなるとその血管は太くなり、蛇行し、静脈瘤のようになります。それを痔核(いぼ痔)と呼びますが、徐々にうっ血が強くなり出血を起こすようになります。さらに長く放置すると痔核は大きくなり、支持している組織が引き伸ばされて肛門の外に脱出するようになります。これを脱肛と呼んでいます。
痔核には、歯状線より直腸側にできる内痔核と、肛門側にできる外痔核があります。また、内痔核が大きくなって脱出するようになると肛門側の痔核、つまり外痔核を伴って内外痔核という状態になることもあります。
ジオン注による日帰り治療法とはどのようなものでしょうか?
「脱出に伴う内痔核」にジオン注を投与して痔核に流れ込む血液の量を減らし、痔核を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法です。しかも注射翌日から出血が止まり、数日で痔核が脱出しなくなります。
痔核を切り取る手術と違って、痛みを感じない部分に注射するので「傷口から出血する」「傷口が痛む」というようなことはなく、日帰り治療が可能となりました。
ジオン注とはどのような薬でしょうか?
ジオン注の有効成分は硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸です。
- 硫酸アルミニウムカリウム水和物
- 出血状況や脱出状況を改善する
- タンニン酸
- 硫酸アルミニウムカリウム水和物の働きを調節する
有効成分の頭文字から ALTA(アルタ)とも呼ばれています。
Aluminum Potassium Sulfate Hydrate – Tannic Acid
どのようにジオン注を投与するのでしょうか?
ジオン注は痛みを感じない内痔核に注射するので痛みはありません。したがって、麻酔は必要ないのですが、肛門鏡を挿入するのに抵抗がある方には肛門を緩めるために麻酔をかけます。麻酔の方法については医師にお尋ねください。ジオン注は四段階注射法といって図のようにひとつの痔核に4か所に分けて注射し、薬液を十分に浸透させます。複数の痔核がある場合は同様に行います。注射後は落ち着くまで30分〜1時間程度の安静が必要です。
ジオン注の作用はどのようなものですか?
出血を止めます。
脱出や肛門のまわりの腫れを改善します。
ジオン注投与後の経過は?
経過(例) | 望ましくない作用(報告例) | ||
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当日 | 当日は、排便を済ませておきます。 投与後は、麻酔などの影響がなくなるまでしばらく安静にしてから帰宅します。 |
血圧低下、下腹部痛、嘔気(気持ち悪い、胃のあたりがムカムカする)などの症状がみられることがあります。 | |
翌日 | 投与した部分や肛門周囲の状態を診察するために受診します。 | 肛門部が重いような感じ(肛門部の違和感)…短期間(数日)でなくなります。 | |
5〜7日後 | 通院・診察のめやす | 出血の軽減・痔核の縮小 | 肛門の投与部分(粘膜)が硬くなる…通常自然に治ります。 |
2〜3週間後 | 発熱は、投与2週間後までに一過性にあらわれることがあります。 | ||
1か月後 | この治療法は、痛みが続く・出血・排便がしづらくなる・熱が出る、などの好ましくない作用があらわれることがあります。そのため定期的に通院していただく必要があります。 | ||
3か月後 | 痔核の退縮 | ||
6か月後 | |||
1年後 |
通院期間は、処置した痔核の数や大きさなども含めて患者さんの症状により異なります。
排便について
- ジオン注治療後の最初の排便は自宅でもかまいませんが、5分程度で。当日の排便もかまいません。
- 排便時に多少の出血が見られる場合があります。
ジオン注治療では1〜3か月目ごろに出血がみられる場合があります。 - 便が出ないとき、少ないときは浣腸をする場合があります。
通院について
- ジオン注治療を受けた翌日に、診察を受けてください。
- 好ましくない作用(副作用)が起きることもあるので、医師の指示にしたがい定期的に通院してください。
他の医療機関で直腸肛門の診察を受けられる場合には、ジオン注治療を受けたことを必ずお伝えください
治療後は注射した場所が硬くなっていることがあり、他の医療機関で診察を受けられる場合、この症状を誤って悪い病気と診断される可能性があるので、ジオン注治療を受けたことを申告してください。
普段と違った気になる症状(痛み、出血、排便がしづらい、発熱など)があらわれた場合には、すぐに担当医師の診察を受けてください
副作用が隠れていることもありますので十分に検査・診察を行い、症状に応じた適切な処置を行います。症状によってお薬(炎症を抑えるための抗生物質や消炎鎮痛剤、あるいは便をやわらかくするための緩下剤)の投与、坐浴、手術を行うことがあります。